2014-01-01から1年間の記事一覧
自分の中でここ最近、一番再発見して驚いたのが「歴史」に関わってきた時間の長さだったのだけど、そのことが自分という人間の形成に強い影響を与えているだけでなく、結果それを仕事にしてきた期間が十数年あるわけで、ある意味もろにそれで飯を食ってきた…
中央公論の2007年4月号で、養老孟司氏の「鎌倉傘張り日記」という連載エッセイを読んだ。 この回では、現代の教育がなぜ困難なのかを論じていた。 現代は大衆消費社会である。 「消費者の行動は、等価交換を原則とする。つまりは物を買うという行動、交換に…
「進撃の巨人」の諫山創さんが、インタビューで作品の発想の元になったものとして、 「誰かが情報を支配していて、自分たちには真実を伝えられていない」という思いがあった、というようなことを話していた。 このことはこちらにエントリを書いたことがある…
最近、憲法や立憲主義、あるいは民主主義そのものを問うような話が多い。 それは大きく言えば、安倍首相の言う戦後レジームの見直し、という問題につながっていくだろう。 民主主義というものは、資本主義と同じように、近代の産物であり、近代国家として認…
歴史の呪縛、というようなものがある。 例えば、日韓関係、日中関係というものは、その典型的な例だろう。 三国とも、既に第二次世界大戦後に生まれた世代が大部分になっているのに、自分たちが生まれるより前の時代に起こったことに縛られ、いまだにそれぞ…
3年前、2011年の今頃のことになるが、酒井信『最後の国民作家 宮崎駿』(文春新書)を読んだ。この本は、私に宮崎作品を考える上での、また宮崎の発言を考える上での一つの枠組を提供してくれたなと思う。 今までジブリコーナーなどで立ち読みした『ユリイ…
スタジオジブリの広報誌「熱風』2月号が届いた。 この広報誌は丸善・三省堂など主要書店においてあって無料で受け取ることができるのだが、定期購読もすることができ、私は年間2000円の購読料を払って定期購読している。スタジオジブリ関係の情報がいち早く…
長文になってしまったことを冒頭でお詫びしたい。ただこれは旬の問題なので、時機を逸しても意味がないので分割せず一気に掲載することにした。その辺をお汲み取りいただければありがたい。 【投票率はそれほどひどくなかった】 今回の都知事選は、石原都政…
これは「そんなこと言われなくても分かってるよ」という人もいると思うのだけど、私の場合はそれを考えるのに30年くらいかかった感がある。自分の生理的な部分との折り合いということもあるし、実現性とか現実との折り合いということもある。私の場合は、…
【自分の意見を持つためには】あまり当たり前なので書こうとも思っていなかったのだけど、実は案外こういうことで悩んでいる、迷っている人は多いのだということを最近思ったので、自分の意見をどう持つのか、ということについて書いてみたいと思う。「あま…
世の中では、いろいろなことが起こっている。 不都合なこともあれば、誰かから見ればよくないと思うことでも、他の人から見れば当然だと感じられることもある。 ぱっとその様子を見ただけでは分からなくても、よく調べてみるとすごくその由来と現状に納得で…
戸部良一『逆説の軍隊』(中央公論社)。陸軍についての基本的な知識や問題について総合的に書かれていて、とても参考になる。軍隊について何か一冊、と言われたら勧められる一冊だと思う。 声高に非難するでもなく弁護するでもなく、冷静で適度な距離感が読…
今日ネットを見ていて少し反省したことがあったので書いておこうと思う。 この「細川元首相に立候補促す」 池上彰氏「心外」と反論という記事を読んで、自分のメディアリテラシーの甘さを感じさせられた、ということだ。 池上彰さんと言えば、『こどもニュース』…
昨日たまたまテレビをつけていたら、『マツコ&有吉の怒り新党』をやっていた。その内容が妙に頭に残っていたらしく、朝の寝床の中でいろいろ考えていた。 この番組は日常生活の中で感じた様々な「怒り」を番組に投書し、そのないようについてああだこうだと…
みなもと太郎『風雲児外外伝 松吉伝』(復刊ドットコム、2014)読了。発行所が「復刊ドットコム」になっているが復刊ではなく、当初『斬鬼』という時代物の雑誌に連載され、それが廃刊となって、一時『コミックGUMBO』という無料誌に掲載するという話もあっ…
昨日書いたことを朝の寝床の幽明境中で考えていたら、いろいろ考えついたので、そのことについて軽く。 理想の社会というのはどういうものか、という問いに対して、昨日は「一人一人のやりたいことがやれて幸福である」社会が理想だ、という一応の答えを書い…
私は、世の中がどうなってほしいと思っているかというと、まあ簡単に言えば、一人でも幸せな人が増えて幸せでない人が減った方がいいと思う。でも、幸せとか望むものというのは人によってさまざまなので、それを政治の力で実現するということには限界がある…
夕食は丸善日本橋店3階のカフェで東京駅方面の夜景を見ながら。こういう楽しみ方が文化的資産の生かし方というものなんだよなと思いつつ、fujiponさんのブログで紹介されていた西原理恵子さんの『この世でいちばん大事な「カネ」の話』の言葉を思い出した。 …
近藤和彦『イギリス史10講』を読んでいる。歴史時代以前から現代までを概観する概説書なのだけど、概説書とはいえ最新の研究成果を反映したヴィヴィッドな歴史書を読むのは久しぶりで、歴史学の最前線で起こっていることが感じられてスリリングな読書になっ…
本郷和子『蕩尽する中世』(新潮選書)を読んだ。 ジョルジュ・バタイユのいう『蕩尽』というキーワードで日本中世を読み解こうという試み。そういうことはあまり考えたことがなかったが、確かに言われてみれば中世は昔話的には豊穣のイメージが結構ある。 …
今日は簡単に、小林よしのり『ゴーマニズム宣言SPECIAL 大東亜論 巨傑誕生篇』に目を通した感想を書いておきたい。 先日来、たまたま小林よしのりさんについて書いたら、ちょうどその書いている期間に小林さんの新作『大東亜論』の発売があったので、これも…
今日は純粋に歴史学的な興味から読んだものについて書いてみたい。 私は西洋史学科を卒業して高校の歴史を教える教師として10年間在籍し、大学院も修士課程を終えていて、短大で日本近代史の講師などを務めたこともあるのだが、現在では歴史学の一線に触れ…
(その3)からの続きです。 2014年現在、支配的であるようにみえる思潮は、思想的な大義を求めるものではなくて、「現実主義」的な立場のものだ。それはつまり経済発展とか大国化とか現状維持とかの思想には関係ない部分に根拠をおくもので、「親米保守」と…
(その3)からの続きです。 90年代半ばから0年代半ばまで、かなりの部分「小林よしのりの時代」と言える時期があったように思う。小林さんは一人でさまざまなタブーに挑戦し、それまで語りにくかった問題を表に引きずり出し、論点をオープンにした。快刀乱…
(その1)からの続きです。 次に小林さんが取り組んだのは、意外なことに従軍慰安婦問題だった。これは次に戦争で戦った祖父たちの名誉回復を図りたいという方向へ進み、南京大虐殺を否定し、ついには大東亜戦争肯定論につながって行く。この展開は、私は個…
【小林よしのりの時代(その1)】 あけましておめでとうございます。今年も『史読む月日』をよろしくお願いします。 今回は現代の思想的傾向に大きな影響を与えた小林よしのりさんのことについて書いて行きたいと思います。少し長くなりましたので、何回か…