史読む月日―ふみよむつきひ―

歴史のこと、歴史に関わる現代のことなど。

2014-02-01から1ヶ月間の記事一覧

サハラ砂漠の遊牧民、トゥアレグを巡る問題

Photography by Dan Lundberg 昨年9月の『歴史と地理』に掲載されていた、私市正年「フランスにおけるサハラ地域の植民地化とトゥアレグ問題」を読んだ。 トゥアレグはサハラ砂漠西部に住む遊牧民族で、アルジェリア、マリ、ニジェール、リビアの領域に100万…

高野秀行『謎の独立国家ソマリランド』は、2013年に読んだ本で一番おもしろい本だった。

高野秀行『謎の独立国家ソマリランド』読了。面白かった。面白いという意味では、今シーズンナンバーワンかも。『多崎つくる』もよかったけど、これは面白いというのとは違うから、面白さという点では『ソマリランド』はここ数年読んだ本の中でも相当ハイレ…

水野和夫『人はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』(1)世界史的転換を描こうとしていることと、デフレ下での経済成長という「近代の常識」の破れの指摘

水野和夫『人はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』を読んでいる。まだ読みかけだが、なかなか全体像が描きにくい。 この本は、一口で言えば、1995年以降、日本を含む世界は大きな転換期、近代の常識が、主に経済面でだが、経済面だけでなく、通用しない…

【「責任を持つ」ことの意味、「責任をとる」ことの意味】

仕事に関する本をいろいろ読んでいて、「責任を持つ」というのはどう言うことかについて考えていたのだけど、それはつまり、 1.「その仕事をする」のは「自分しかいない」ということを認識し、 2.いかにしたらその仕事をやり遂げられるかを考え、 3.そ…

「グローバル経済」と「新中間層の没落」

水野和夫『人はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』を読んでいる。 まだ読み始めたばかりなのだが、現在起こっているグローバリゼーションの本質は長期的な利益率の低下による資本の利潤回復運動であり、ということは実質賃金を下げようとする「資本の反…

京都造形芸術大学理事長・徳山詳直さんの日本復興構想の熱さ

昨日は京都造形芸術大学の専務理事の徳山豊さんについて書いたのだが、この人も高校からアメリカのミリタリー・スクールに留学したりして凄い人だなと思ったのだけど、この人のお父さん?と思われる徳山詳直さんというこの大学の理事長のインタビュー記事が…

大学、ないし教育はどうあるべきか:人間の真の豊かさと「手のひら芸大」の試みー「逸脱への恐れ」を超えて

月刊MOKUの2014年1月号を読み返して、特集の『豊かさとは何か」の対談で、『知と藝術のジャングル 人間の真の豊かさを求める「教育再興論」』と題して徳山豊さんが話をされていた。徳山さんは京都造形芸術大学と東北芸術工科大学の専務理事をされているのだ…

ブラジルについて考えることは、国民国家イデオロギーの有効性について考えることでもある

Photography by Artyominc 『歴史と地理』(山川出版社)の『地理の研究』189号を読む。 『ブラジル』を特集していて、最初の論文・丸山浩明『ブラジルの人種・民族と社会』が、ブラジル社会の歴史的・人種的形成について詳細に述べていて、勉強になった。 …

「歴史的なものの見方」の使い方

自分の中でここ最近、一番再発見して驚いたのが「歴史」に関わってきた時間の長さだったのだけど、そのことが自分という人間の形成に強い影響を与えているだけでなく、結果それを仕事にしてきた期間が十数年あるわけで、ある意味もろにそれで飯を食ってきた…

「教育改革」に必要な考え方は何か

中央公論の2007年4月号で、養老孟司氏の「鎌倉傘張り日記」という連載エッセイを読んだ。 この回では、現代の教育がなぜ困難なのかを論じていた。 現代は大衆消費社会である。 「消費者の行動は、等価交換を原則とする。つまりは物を買うという行動、交換に…

「マスゴミ」はなぜ「情報を操作する」のか

「進撃の巨人」の諫山創さんが、インタビューで作品の発想の元になったものとして、 「誰かが情報を支配していて、自分たちには真実を伝えられていない」という思いがあった、というようなことを話していた。 このことはこちらにエントリを書いたことがある…

橋下市長の「出直し市長選」と各野党の「不戦敗戦術」を批判する:その議論の前提としての「戦後レジームの見直し」を「議論」すべきだ。

最近、憲法や立憲主義、あるいは民主主義そのものを問うような話が多い。 それは大きく言えば、安倍首相の言う戦後レジームの見直し、という問題につながっていくだろう。 民主主義というものは、資本主義と同じように、近代の産物であり、近代国家として認…

『歴史の呪縛』と「スコットランド独立」を問う住民投票の実施

歴史の呪縛、というようなものがある。 例えば、日韓関係、日中関係というものは、その典型的な例だろう。 三国とも、既に第二次世界大戦後に生まれた世代が大部分になっているのに、自分たちが生まれるより前の時代に起こったことに縛られ、いまだにそれぞ…

『最後の国民作家 宮崎駿』と「宮崎アニメの描く過渡的・奇形的な自然」

3年前、2011年の今頃のことになるが、酒井信『最後の国民作家 宮崎駿』(文春新書)を読んだ。この本は、私に宮崎作品を考える上での、また宮崎の発言を考える上での一つの枠組を提供してくれたなと思う。 今までジブリコーナーなどで立ち読みした『ユリイ…

ジブリの広報誌で山田長政を振り返る

スタジオジブリの広報誌「熱風』2月号が届いた。 この広報誌は丸善・三省堂など主要書店においてあって無料で受け取ることができるのだが、定期購読もすることができ、私は年間2000円の購読料を払って定期購読している。スタジオジブリ関係の情報がいち早く…

【今回の都知事選を振り返って:私はなぜ家入一真さんに投票したか】

長文になってしまったことを冒頭でお詫びしたい。ただこれは旬の問題なので、時機を逸しても意味がないので分割せず一気に掲載することにした。その辺をお汲み取りいただければありがたい。 【投票率はそれほどひどくなかった】 今回の都知事選は、石原都政…

「自分の意見を持つためには」(その2):「自分が大事にしたいこと」を考えるために

これは「そんなこと言われなくても分かってるよ」という人もいると思うのだけど、私の場合はそれを考えるのに30年くらいかかった感がある。自分の生理的な部分との折り合いということもあるし、実現性とか現実との折り合いということもある。私の場合は、…

自分の意見を持つためには(その1)

【自分の意見を持つためには】あまり当たり前なので書こうとも思っていなかったのだけど、実は案外こういうことで悩んでいる、迷っている人は多いのだということを最近思ったので、自分の意見をどう持つのか、ということについて書いてみたいと思う。「あま…

自分の意見を持つ大変さと、しっかりした意見を持つ人が増えることで問題解決に近づけるということ

世の中では、いろいろなことが起こっている。 不都合なこともあれば、誰かから見ればよくないと思うことでも、他の人から見れば当然だと感じられることもある。 ぱっとその様子を見ただけでは分からなくても、よく調べてみるとすごくその由来と現状に納得で…

シリーズ『日本の近代』9巻、『逆説の軍隊』(戸部良一著)は旧日本陸軍について知るにはどの本がと尋ねられたらこれをと勧められる一冊だった。

戸部良一『逆説の軍隊』(中央公論社)。陸軍についての基本的な知識や問題について総合的に書かれていて、とても参考になる。軍隊について何か一冊、と言われたら勧められる一冊だと思う。 声高に非難するでもなく弁護するでもなく、冷静で適度な距離感が読…