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史読む月日―ふみよむつきひ―

歴史のこと、歴史に関わる現代のことなど。

現在の関心のありか。政治プロセスの面白さ。

おはようございます。

私事ですが、54歳になりました。新しい年齢になるにあたり、今感じていることを少し書いておきたいと思います。「お」はつきませんが、「気持ち」です。

何をやりたいのか自分ではっきりさせられない時期が続きました。何でも出来るような気がしていた時期と、何も出来ないような気がして、でもそんなことはないはずだとそれに抗いながらやりたいこと、出来ることを探している時期が続きました。

いま、自分の関心が、政治過程=政治プロセスにある、ということがわかりました。政治がどうやって動いて行くかというプロセス。それを政治家がどうコントロールしていくのか。それがはっきりするきっかけが、西川賢さんの「ビル・クリントン」を読んだことでした。

政治過程が不透明な部分の多い日本の政治と違い、アメリカではある程度オープンで、議論自体が開かれたものであることと、かなりの部分があとから検証できるようになっている感じがしますし、そのプロセス自体も共有され、財産になっているように思います。

魅力的な政治家は、そのプロセスのハンドルの仕方が上手い。クリントンは失敗の多い政治家でしたが、その失敗をリカバリーする力を持っている。レリジエンスが強いタフな政治家であるということが、彼が政治生命を全うし、大きく評価されている理由なのだと思いますし、今回この本を読みながら、そのことを強く感じました。

日本で政治プロセスのハンドルの仕方が上手く、自分のやりたいこと、ないしはやらなければならないことを実現して行く力を持っている(持っていた)政治家として上げられるのは小泉純一郎安倍晋三という2000年代と2010年代を代表する二人の首相ですが、今一番注目したいと思っているのは小池百合子さんです。彼女は上手に状況をコントロールして、無謀とも思えると知事選立候補から、ついに女性初の都知事になりました。初の女性首相とすら見なされた時期もあった中で第二期安倍政権の中でポストを与えられなかった中、取り組むべきポストを自ら奪取したわけで、これは彼女の才能が発露した決断だったと思います。

そのほか、終戦の日靖国参拝問題が取りざたされていた稲田知美防衛庁長官が、お盆期間中に海賊対処法に基づいてジプチの海上自衛隊を視察に出張する、という判断も、これは誰がしたのかはわかりませんが、政治感覚の鋭い判断だったと思います。靖国参拝も重要だが、現についている任務を優先し、しかも海外の自衛隊の視察に行くというのは、その姿勢が後退した、という印象を与えません。稲田さん自身の判断だとしたら稲田さんの政治感覚は侮れないと思います。

私は修士論文フランス革命期のボルドーの革命前後の政治過程というテーマで書いているのですが、この時には政治過程に興味があるとは思っていましたが、そこまで深くは自覚していませんでした。ここに戻って来たことで、自分が興味があるのはそう言うところなんだということを改めて自覚した次第です。

それから、今自分の本棚を見ていて思ったのは、私は例えばスタジオジブリ鈴木敏夫さんとか、Appleスティーブ・ジョブズと言う人に興味があると言うこと。それは、二人とも企業の意思決定の過程をハンドルするのが上手だということですね。ジョブズが上手だと言うのはまあ語弊がありますが、それでもなんであれ結果的に自分のやりたいことを実現して行くわけですから、破格な経営者ではありますがその意思決定プロセスへの関与の仕方は興味深いものがあります。

鈴木敏夫さんは宮崎駿高畑勲と言う二人の期待の天才アニメ制作者の才能を最高に引き出すための事業経営という点で、やはり群を抜くところがあります。ジョブズもそうですが天才というのはある種の「問題」、それも相当難度の高い「問題」ですから、それを「解決」して行くプロセスもまたある種破格なものがある。それはどういう過程でも通用するように一般化することは出来ない、というか一般化にはあまり意味がないと思いますが、しかしそれを調べてみること自体はすごく面白いことだと思います。

政治は常にクリエイティブでなければならないし、企業経営、企業活動も常にクリエイティブでなければならないと思います。で、クリエイティブであるということは、一回一回の問題への取り組みが常に初の自体であるということ。マニュアル化したり一般化したりすることが出来る部分もあれば、そのときの解決法がとても他のケースでは使えない、ということもあります。世の中の多くの問題はルーティン的な解決で何とかなりますが、本当はそれでやらない方がいい場合でもルーティン的、原則的な解決が図られる場合もある。まあ、原則で処断した方がいいケースでそうせずにルーズに流れてしまう場合もあるわけですが。

冷戦後の時期のアメリカ大統領であるとか、スタジオジブリのアニメ制作であるとか、「初の事態」を乗り切るためには、クリエイティブであらざるを得ない。その辺りが本当に面白いのだと思います。

問題のありか、その問題のどこが本当の問題なのか、その問題の本質のつかみ方がまず重要ですし、それを解決するためにはどういう手段を動員すればよいか。また、解決策をどのように見つけ、どのように実行に移すのか。その実施をどのようにハンドルし、どのように検証するのか。政治の舞台やアニメ制作の現場では、大きな問題から小さな問題まで次々と課題が現れ、それを的確にハンドルして行かなければなりません。そしてその修羅場の中でどのように自分をリフレッシュさせながら問題に取り組んで行くか。タフさも問われます。

シン・ゴジラ」が面白いのもそう言うところなのだと思います。

ですから、興味があるのは「政治プロセス」というよりは「クリエイティブなプロセスそのもの」なのだなとも思いますが、この点を一般化するとまた関心の中心が拡散して行くといけないので、とりあえず「政治プロセスに関心がある」ということにしておきたいと思います。

物語への関心というのも、結局はこうしたプロセスの問題が好きだからだな、と思います。現れた課題をどのように解決して行くかという物語。その中での主人公の成長。「ナルニア」も「天路歴程」もそうなのですが、「天路歴程」では成長とは信仰心の深まりである、と定義されているところが独特で、その辺が面白いなと思います。

私は歴史が好きで歴史を専攻したわけですが、別に古文書が好きなわけではなく、政治(だけではありませんが)プロセスを理解して行くことに興味があったのだと思います。そしてそのプロセスのハンドルの仕方に個性があり、歴史的な人物の個性がそこに表れて来ることが興味深いと思ったのだなと思います。

54歳といえばもうだいぶいい年で、ロック54だからロックな年だと嘯いてみたりしますが、この方向で自分のやりたいこと、興味のあることに取り組んで行きたいと思っています。