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史読む月日―ふみよむつきひ―

歴史のこと、歴史に関わる現代のことなど。

地方の進学校の凋落と医師不足の深刻化には関係があるということ

いま、かつての地域の名門公立進学校が、周囲の私学などに押され、また通学範囲が広がったことによって寄り吸収力の高い県庁所在地の公立高校などに生徒を奪われて、地盤沈下している例が多い。

 

私の郷里である長野県では、東京の事例などの例を鑑みて、公立の中高一貫校を作る試みが行われている。

 

地域には進学校が必要だ。

 

こういうことを言うと、教育の機会平等を主張する人々からは高校間格差を是認するのかという反論が(少なくとも昔は)あるわけだけど、実際問題として学力の差はかなりあるということと、貧しい地方の生徒が社会的上昇を目指す機会は公立進学校から東大や京大、国立大学の医学部などに進学するというくらいしか機会が得にくいという現実があり、地方公立校の凋落はその意味でも地方出身者の社会的上昇を難しくするという問題を起こしている。

 

しかし、もっと直接的な理由もある。

 

いま、地方では医師不足が深刻だ。医学部を卒業した学生は、東京など大都市に集中する傾向がある。それは就業機会が多いことと、最新の医学の流れにコミットしやすいという理由もあるけれども、それだけではない。

 

医師というのは、私が知る限りでは、もっとも自分の子どもに自分の職業を継がせることを望む人々だ。

 

医師になるためには言わずもがな、医学部に入らなければならない。そして医学部は、最近の不況の状況もあり、「東大よりも医学部」と言われるように、国立私立を問わずその入試はどんどん難関になってきている。

 

そういう状況の中にある医師たちにとって、勤務地の近くにめぼしい進学校がないということは、非常に大きなことなのだ。

 

自分の子弟を通わせたい進学校が近辺にあれば、医師は安心してその地に赴任出来るだろう。しかしそうでなければ、その地域への赴任に難色を示すことになる。

 

ただでさえ高齢化の進行する地方にとって、医師が足りないということは致命的なことだ。相当な高額の報酬を提示して、医師の移籍をあっせんする仲介業者もいるらしいけれども、いくら報酬が高額でも条件に合わないと拒否される場合のうちには、子どもを通わせられる高校がない、ということも多いようなのだ。

 

そういう意味で地方の公立校の立て直しは、地域を維持していくためにも必要なことなのだ、という話を地方の首長経験者に聞いたことがあった。