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史読む月日―ふみよむつきひ―

歴史のこと、歴史に関わる現代のことなど。

野村進『コリアン世界の旅』を読んでいる。(1)1996年と2014年の間に日本人の対朝鮮・韓国観がいかに激変したか。

コリアン世界の旅

 

野村進『コリアン世界の旅』を読んでいる。1996年の本ということで、少し古さを感じるのは、2002年の拉致事件発覚、金正日がその事実を認めて以来、急速に日本人の対韓国・朝鮮観が厳しくなったのと、韓流ブームに代表されるように、「特殊な関係の国」ではなく、普通の外国の一つになってきたということが大きいように思う。

 

当時はまだ、日本は加害者で、被害者である韓国・朝鮮に対して謝罪の念を持たなければならないと言う思想がまだ浸透していた時期だったから、そういうスタンスの内容でなければ書きにくいと言うことはあったと思う。だから多くの人々が「なんか変だ」と思いながら彼らの主張を黙って聞いているという感じになっていた。

 

21世紀になり、拉致事件が明らかになり、あぶくのように誕生した日本の左派政権が軒並み失敗して、いわゆる進歩的文化人やインテリ左派系新聞の言説がウソだった、という認識が広まるにつれて、日本人の対韓国・朝鮮観は肩の荷を降ろしたような感じになってきたけれども、韓国人自身の認識が変わったわけではないので、そのギャップがどんどん激しくなってきているということはある。

 

今この本を読むとそういう意味でどうしても古い考えに縛られている描写が多いと感じられ、極端に言えば戦前の本を読んでいる感じになる面もあるのだけど、でも在日朝鮮人に対する取材ではなくて、ロス暴動の後のアメリカの韓国人であるとか、直接日本と利害が絡まないところで取材した内容はビビッドで今でも価値を失っていないように感じた。

 

いまのところ、まだ154/372ページで半分読んでないのだけど、ルポルタージュであるだけに基本的には読みやすい。ただあまりにイデオロギー色の強い「民族教育」の部分はちょっと飛ばし飛ばしにしか読めなかった。日本社会にいてもう半世紀を超える居住者たちが民族性はともかく未だに国籍にこだわり続けているのはやはりちょっと理解しにくく、その辺りは冒頭のにしきのあきらの感覚の方がずっと理解できるものがあった。ただ、在日朝鮮人の世界に関して、焼肉屋とパチンコ屋と言う二大産業についてのルポはすごく面白かった。

 

もともとこの本は韓国軍の起こしたベトナム戦争における虐殺事件について知りたいと思って読み始めたのだけど、まだそこまで行っていないのだが、わずか18年の間に180度変わった日本人の「公式的」な韓国・朝鮮観の変化の方に、より興味深いものを感じたのだった。

 

まだ、雨が降り続いている。