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史読む月日―ふみよむつきひ―

歴史のこと、歴史に関わる現代のことなど。

野村進『千年、働いてきました』を読んだ。(3)独創的なアイディアとは、「チャップリンのステッキ」をみつけること

(その2)からの続きです。

 

野村進『千年、働いてきました』。後半も、どのエピソードも面白い。

 

ブリキ製造業がカンテラを作ることでガラスの技術を得、それが鏡の分野への進出の始まりで(ところで鏡台作りが静岡の地場産業であるということははじめて知った)、トヨタにバックミラーを納めるようになり、今では全国の4割のシェアを持つのだという。

 

岡山の林原産業のエピソードなども実に面白いものが多かった。(林原は2011年会社更生法適用を申請し、現在は他社の完全子会社になっている。この辺りの過程にはいろいろあったようだが。)

 

老舗の企業が成功するのは結局本業を守りつつその応用分野への進出程度にとどめることで、本業が何かという意識を捨てたらダメだ、という話はなるほどと思った。

 

どうやったら独創的なアイデアを見つけられるか、という問いに対し、林原社長は単なる組み合わせだと思う、という。著者はそれを敷衍し、「チャップリンのステッキ」というたとえを使う。どた靴もだぶだぶの服も山高帽も付け髭も使い古されたギャグの小道具に過ぎなかった。チャップリンの独創は、それらを組み合わせてそれにステッキを加えたに過ぎない、という話である。しかしそれによって統一性が生まれ、全く新しいスタイルのコメディアンが誕生したと観客の目には映った、というわけだ。この話は非常にわかりやすいと思う。

 

周りを見渡す目と自分の仕事を客観的に見る目、それを組み合わせる工夫とそこに「世の中に役に立つ」可能性を見出すセンスがものをいう、ということになるだろうか。こういうことはまさに言うは易し、という感じのことで、日々の仕事に追われている中でそういうことを見出すのは難しいことだろうと思う。しかしチャップリンのステッキという考え方は、いろいろなことについてヒントになるのではないだろうかと思った。