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史読む月日―ふみよむつきひ―

歴史のこと、歴史に関わる現代のことなど。

サハラ砂漠の遊牧民、トゥアレグを巡る問題

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                  Photography by Dan Lundberg

昨年9月の『歴史と地理』に掲載されていた、私市正年「フランスにおけるサハラ地域の植民地化とトゥアレグ問題」を読んだ。

 

トゥアレグサハラ砂漠西部に住む遊牧民族で、アルジェリア、マリ、ニジェールリビアの領域に100万人から350万人の人口をもつと言われている。彼らは青いターバンと民族衣装を着用していて、男性が全身と顔を衣装で覆っている。砂漠に住む好戦的な民族として描写されることが多かったようだ。

 

このようなトゥアレグの話は昔から興味があったのだけど、歴史的な背景とフランスによる植民地化によって生じた問題、2004年以降のアルカイダ系との結びつきや、フランスの利権確保=再植民地化(このテーゼへの賛否はともかく)と幅広く現代の問題と結びつけながら書かれていて、この論文は興味深かった。

 

トゥアレグはラクダの遊牧と交易と略奪を中心とする民族だったが、フランスによる植民地化で最下層に転落させられ、かつては黒人奴隷を所有していたのに現在ではマリやニジェールに分断された生活圏で、黒人政府に圧迫されているという構造になっているのだという。

 

そこまではなかなか想像しにくいところなのだが、マリを中心とした地域で独立を目指すトゥアレグリビア内戦に傭兵として参加することで軍事力を高め、マリ北部に一時独立政権を立てたが、共闘していたイスラム過激派に倒された、という経過があり、これが昨年のアルジェリア人質事件につながっていっていて、背景として同じものがあるのだ、ということは理解した。

 

クルド人もそうだが、民族として一定の住民がいても、国家を持たないことで不利な状況に晒される民族というのは世界史的にはよくあることだ。トゥアレグもまたそういう立場の存在なのだということを、この論文で知ったのだった。