読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

史読む月日―ふみよむつきひ―

歴史のこと、歴史に関わる現代のことなど。

【今回の都知事選を振り返って:私はなぜ家入一真さんに投票したか】

長文になってしまったことを冒頭でお詫びしたい。ただこれは旬の問題なので、時機を逸しても意味がないので分割せず一気に掲載することにした。その辺をお汲み取りいただければありがたい。


投票率はそれほどひどくなかった】

 

今回の都知事選は、石原都政時代に副知事の実績を積み上げ、圧倒的な得票で当選した猪瀬前知事が徳洲会事件の影響で都議会・マスコミに追及され、知事を辞職したことで行われた。異例の2月の選挙となり、結果的には前日に降った大雪のために大きな影響が見込まれたが、最終的な投票率は46パーセントと、最悪というほどでもなかった。過去3番目に低い数字だというが、最悪は昭和62(1987)年の43%、次が平成15(2003)年の44%で、どちらも4月の選挙なのだから、2月の大雪の残る日の選挙であることを考えたら健闘したと言っていいのではないかと思う。

 

私自身は、猪瀬氏の件に関し、どうもあんなに追及される理由がよくわからなかったので、(つまり政治家でああいう裏がない人がそんなにいるとも思えないということだが)やめる必要はないと思っていたから、今回の選挙は正直言ってあまり乗り気ではなかった。東国原氏が出ないとわかった時点で少し安心したが、そのあと出馬表明した宇都宮さんや舛添さんもそんなに魅力的には思えなかったし、細川さんが出るとわかった時には何かやるかもしれないと思ったが期待はしりすぼみになり、田母神さんは正直この人が都政に出る意味が分からなかった。

 

私は自社さ政権の失敗以来、基本的には自民党に入れるようになっていたのだが、民主党から安倍さんが政権を取り戻してからは、安倍さんに翼賛するだけのタイプの人しか出ないとさすがに将来が見えない、もっと政治は立体的であってほしいという感じが強くなっていて、誰に入れたらいいのかということを決めかねていた。

 

【宇都宮さんについて】

 

宇都宮さんは、この人を最初に知ったのは小林よしのりさんが裁判をやった時に弁護団の一員として名前を見たことだった。その後、オウム真理教事件オレオレ詐欺事件などでの活躍や日弁連会長への就任などでどんどん存在感が上がってきた。私の印象としては悪い人ではないけど未来を託すという雰囲気の人ではないという感想だった。


【舛添さんについて】

 

舛添さんは私が大学に在学していた当時、教養学部助教授で、法学部卒業即助手の、とにかく切れ者の学者として知られていた。教養学科の学生からは、舛添さんの家に電話すると日本語で留守電のコールがあった後、喋ろうとすると英語のコールが続き、また喋ろうとすると今度はフランス語のコールがあるので、公衆電話から10円でかけると何も言わないうちに切れてしまうと言う冗談ともつかない話があった。とても近づきがたい切れ者、という印象があったわけだ。

 

だからテレビに出演するようになって気さくな口調で何でも発言しているのを見ていると意外の念には打たれたが、そういう大衆化を目指しているのかなという感じだった。

 

80年代の終わり、ちょうど東大教養学部中沢新一招聘問題が起こり、西部邁さんが辞職したのと同じタイミングで、舛添さんも教官を退職した。西部さんの退職は納得できたが、舛添さんの辞職は同じように東大の体質を批判はしていたけどあまり意味がよくわからなかった。

 

その後政治評論家として活動し、やがて政界に進出し、都知事選に出、参院選に出て自民党の議員になった。自民党が政権を民主党に明け渡したあと、2010年に自民党を離党して新党改革の党首になり、2013年に議員も辞職した。猪瀬氏が辞職を表明したあと都知事選への立候補を表明した。

 

この人は多分、有能なのだと思う。そしてその有能であるというところにみな期待して投票したのだろう。やることはやっているし、押さえるべきところも押さえている。ポリティカルに正しい線に関しては実は結構神経を使っているだろう。きっと細部に行けばいくほど、彼の有能さは見えてくるように思う。

 

しかし、どうも私はこの人に投票する気になれなかった。頭がよすぎるのかもしれないが、それがどうもあまりい方には出ていない感じがするところがあって、たぶん漫画家がマンガにしても、善人顔として描くのは難しいのではないかという感じがする。

 

政治家としては必ずしも悪い評価ではないのだけど、狡猾だという印象がやはり強いのだろう。東大をやめるときも、自民党をやめるときも、議員を辞める時も、後ろ足で砂をひっかけて出て行ったような感じがして、石原さんのような馬鹿正直さや、猪瀬さんのような純朴さがない。

 

おそらくは都知事をやっているうちはある程度有能だろうし、母堂の介護経験や厚生労働大臣経験などから福祉を売り物にしているけれども、本当に弱者のサイドに立てるのかと言えばまたそれも違う感じがする。まあこの辺は、エリートであるからこそ、何でも分かってしまうからこそすべてをうまくやろうとしてしまって綻びが出るという感じがするから、それはまあそういう感じは私にもよくわかるので仕方ないかなと思うところもあるのだけど、何というか『東京の顔』というには物足りないという感じがしたのだった。


【細川さんについて】

 

細川さんに関しては、出ると聞いたときには盛り上がったし、小泉さんと二人で選挙カーに乗っているのを見てこれは凄いと思ったけれども、蓋を開けてみれば全然声がこちらに届いてこない感じがあった。私が通っている野口整体の整体協会の会長でもあり、納得できれば応援してもいいと思っていたのだけど、いかんせんまともに知事をやろうという感じが感じられない。都知事選は国政のイシューがよく持ち込まれる選挙ではあるのだけど、それにしても反原発以外の問題にどう取り組むのかは見えないし、また反原発にしても道筋をどうつけるのかが全然見えてこなくて、ちょっとこの人はないなあと思うに至った。

 

私は基本的に、原発というのは文明史的には「オワコン」なのだと思っている。何か、決定的な解決手段、特に使用済み核燃料の安全な保管ないし安全な再利用等に決定打があれば復活することはあるにしても、現時点では基本的には研究程度に逆戻りさせるべきで、それ以外のエネルギー供給手段の開発に力を入れるべきだと思う。アメリカでシェールガス革命がおこったように、メタンハイドレートなど期待が持てるものもあるし、原発にこだわるエネルギー族の妨害をなくし、適切な予算の投入があれば、それなりの代替手段は見いだせて行けるはずだと思う。そこまでどのように持っていくかはその次の問題で、先ずは原発オワコンにし、代替手段を実現させるという最終目標を持って取り組んでいく、またそれと並行して安全な原子力発電を実現するための研究もまた続けて行けばいいのだと思っている。

 

だからむしろ原発廃止のシングルイシューというのは却って選挙を引っかきまわして、争点を混乱させただけなのではないかという気もしなくはない。原発維持を明確に唱えているのは田母神氏だけだし、そのほかの候補はみな少なくとも長期的には廃止という線だったのだから。


田母神さんについて】

 

田母神さんに関しては、先ほども書いたが、この人はなぜ出てきたのだろうという感じが最初から最後まであった。この人は元自衛官とは言っても当たり前だが軍人ではなく、実戦経験もない。日本の防衛関係者というのはどうしてもそういう弱点を持っている。せめてPKO経験者が中枢にかかわるようにならないと、どうしても昼行燈のようなイメージが付きまとってしまう。

 

ただ、航空幕僚長という肩書を持って航空自衛隊を引っ張った経験はあるので、日本の防衛や危機管理に関しては専門家であると言っていいのだと思うし、むしろそうした場面で現場の見識というものを見せて行けばいいのではないかと思う。

 

私は基本的に右か左かと言えば最近は右寄りではあるのだけど、どうも左だけでなく右の人たちも現実感がないというか、日本をどうしていきたいのかについて明確なビジョンがあまり感じられないのが現状だと思う。

 

政治的スタンスとしてはこの人に一番近いのかもしれないが、最初から最後までこの人に入れるということは考えなかった。

 

というわけでいわゆる主要4候補の誰に入れるか、で迷っていても全然入れたいという気がする人がいないので、今回はどうしようか、それとも『猪瀬直樹』と書いて投票してみるか、というくらいのことを考えていた。


【私が家入さんに投票した理由】

 

家入一真さんに関しては、最初はふざけてるなという印象しかなかった。1000RTされたら立候補、みたいなことがきっかけだったと思う。自分でもだらしないと言っているし、「夜間飛行」で始めたメルマガをあまりに期日を守らないために廃刊になったり、まあネットの世界には面白い人もいるなという感じではあった。

 

彼を知ったのはもともと、ペーパーボーイの創業者だということで、いろいろな場所で彼がしたことや発言について取り上げられていたけど、学歴もない元引き籠りででも福岡で会社起こして成功して、東京に出てきて現地と軋轢起こして会社も辞めたけど、いろいろと興味の持てる事業に出資しながら、その都度物議をかもしつつもネット界での有名人になって行った若い人、というイメージだった。

 

だから最初は全く投票する気はなかったのだけど、親交のある堀江さんが応援し出したことでちょっと印象が変わった。というかこちらの考え方が変わった。

 

どこかで読んだが、本当は、全国でも珍しく、東京は40代以下の方が50代以上よりも人口の多い都市なのだ。なのに、都知事選の立候補者で、40代以下は家入さんしかいないのだ。

 

それはおかしいだろう。いわゆるネトウヨと言われる若者たちは田母神さんを支持する。それは分かるけど、もっと自分たちの問題を抱えている、多くの若年層の人たちが投票すべき相手がいない。確かに家入さんは適当すぎるし、万一知事になってしまっても勤まるとは正直思えない。

 

しかしここは、若者の間から出て来た動きを応援してみてもいいんじゃないか。もちろんもっと地道に活動している若者たちもたくさんいて、本当はそういう人たちの中から立候補者が出てくるべきだったのかもしれない。しかし大きな組織に入っている人たちはどうしても押しの強い年長者のしがらみに捉えられて、あまり身動きが取れないだろう。ネットの有名人だからいい、ということは全然ないのだけど、若い人たちが活躍する可能性が大きいネットの世界の人だからこそ、しがらみにとらわれない新しい発想と、今まで政治が対象ともしてこなかった、完全に見捨てられていた人々や問題を掘り起こし、拾い上げる可能性が、この選挙運動にはあるのではないかという感じがしたわけだ。

 

選挙終了間際になって彼が発表した120の政策は、十分に煮詰まっているとはとても言えないけど、若者の声がかなりストレートに反映していて、これは家入さんにしか出せないものがあるのではないかと思った。まず、問題化することが大事だ、という問題が、世の中にはまだいくらでもあると思う。北朝鮮に拉致された被害者たちの問題にしても、当事者たちがどんなに頑張って声を上げても、なかなか問題にすらしてもらえない時期が長く続いた。まして、あれだけの努力してくれる親や身内のいない若者や子供たちの問題は、まず間違いなく取り上げられないだろう。

 

そういうことが取り上げらえる芽が、家入さんの活動にはあると感じられたので、今回は家入さんに投票した。残念ながら10万票にも達しなかったが、家入さん自身が本気で悔しがっているし、また今の興奮状態があるということもあるだろうけど、今後も活動を続ける気があるようなので、その辺の動きがどうなるのか、見守っていけるといいなと思う。どちらに転ぶかは全然わからないのだけど、そういうノリで若者たちがまた選挙に帰ってくるようになったら、もう少し若者にとっても暮らしやすい社会が実現していく可能性はあると思う。


【舛添さん、頑張ってください】

 

舛添さんが新知事になって、この人はまあいうまでもなく無難にいろいろこなしていくだろうと思うから、まあそれはそれでいいんじゃないかと思う。空回りしないように心掛けていただければ、それなりにいい都政が実現するかもしれない。祝福とともに、いい都政の実現に期待したいと思う。