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史読む月日―ふみよむつきひ―

歴史のこと、歴史に関わる現代のことなど。

エドガーの戴冠:近藤和彦『イギリス史10講』より

 

 

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近藤和彦『イギリス史10講』を読んでいる。歴史時代以前から現代までを概観する概説書なのだけど、概説書とはいえ最新の研究成果を反映したヴィヴィッドな歴史書を読むのは久しぶりで、歴史学の最前線で起こっていることが感じられてスリリングな読書になっている。

 

今は第2講まで、10世紀まで読んだが、アルフレッド大王の曾孫に当たるエドガー(平和王)のバースにおける戴冠(973)を意味深いものと考えられているのは初めて知った。アングロサクソン時代の王と言えばアルフレッドと、次はノルマン侵攻のきっかけを作ったエドワード懺悔王くらいしかちゃんと認識していなかったのだが、このイングランド王の戴冠をドイツにおけるオットー大帝の戴冠(962)とフランスにおけるユーグ=カペーの戴冠(987)と並列的な出来事と考えてみると、なるほどその重要性が認識できると思った。

 

すなわち、ゲルマン的な血統の正統性を条件としながらも、ローマ皇帝的な民衆による歓呼、カンタベリ大司教による塗油(旧約聖書イスラエル王の儀式に習う)を経て戴冠した王が貴族たちから臣従の礼を受ける。といういくつもの要素が融合した形での王権の成立のさせ方が共通しているというわけである。

 

Wikipediaを見ても日本語版と英語版でエドガーに関する記述は相当差があるので、もう少し知られてもよいことなのではないかと思った。

 

ドイツやフランスと違いイギリスの場合はこのほぼ100年後にノルマン征服という大事件が起こるのでそのまま後世に連続していくわけではないのだけど、逆に言えばアングロサクソン以来の伝統を重視する立場からはこの王の存在感はもっと高められるべきだと考えられているのかもしれない。

 

 

歴史に関する知識や考察力をブラッシュアップすることで、文章を読むことはもとより書くことの感覚も新たにできるように思った。

 

イギリス史10講 (岩波新書)