史読む月日―ふみよむつきひ―

歴史のこと、歴史に関わる現代のことなど。

水野和夫『人はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』(1)世界史的転換を描こうとしていることと、デフレ下での経済成長という「近代の常識」の破れの指摘

水野和夫『人はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』を読んでいる。まだ読みかけだが、なかなか全体像が描きにくい。 この本は、一口で言えば、1995年以降、日本を含む世界は大きな転換期、近代の常識が、主に経済面でだが、経済面だけでなく、通用しない…

【「責任を持つ」ことの意味、「責任をとる」ことの意味】

仕事に関する本をいろいろ読んでいて、「責任を持つ」というのはどう言うことかについて考えていたのだけど、それはつまり、 1.「その仕事をする」のは「自分しかいない」ということを認識し、 2.いかにしたらその仕事をやり遂げられるかを考え、 3.そ…

「グローバル経済」と「新中間層の没落」

水野和夫『人はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』を読んでいる。 まだ読み始めたばかりなのだが、現在起こっているグローバリゼーションの本質は長期的な利益率の低下による資本の利潤回復運動であり、ということは実質賃金を下げようとする「資本の反…

京都造形芸術大学理事長・徳山詳直さんの日本復興構想の熱さ

昨日は京都造形芸術大学の専務理事の徳山豊さんについて書いたのだが、この人も高校からアメリカのミリタリー・スクールに留学したりして凄い人だなと思ったのだけど、この人のお父さん?と思われる徳山詳直さんというこの大学の理事長のインタビュー記事が…

大学、ないし教育はどうあるべきか:人間の真の豊かさと「手のひら芸大」の試みー「逸脱への恐れ」を超えて

月刊MOKUの2014年1月号を読み返して、特集の『豊かさとは何か」の対談で、『知と藝術のジャングル 人間の真の豊かさを求める「教育再興論」』と題して徳山豊さんが話をされていた。徳山さんは京都造形芸術大学と東北芸術工科大学の専務理事をされているのだ…

ブラジルについて考えることは、国民国家イデオロギーの有効性について考えることでもある

Photography by Artyominc 『歴史と地理』(山川出版社)の『地理の研究』189号を読む。 『ブラジル』を特集していて、最初の論文・丸山浩明『ブラジルの人種・民族と社会』が、ブラジル社会の歴史的・人種的形成について詳細に述べていて、勉強になった。 …

「歴史的なものの見方」の使い方

自分の中でここ最近、一番再発見して驚いたのが「歴史」に関わってきた時間の長さだったのだけど、そのことが自分という人間の形成に強い影響を与えているだけでなく、結果それを仕事にしてきた期間が十数年あるわけで、ある意味もろにそれで飯を食ってきた…

「教育改革」に必要な考え方は何か

中央公論の2007年4月号で、養老孟司氏の「鎌倉傘張り日記」という連載エッセイを読んだ。 この回では、現代の教育がなぜ困難なのかを論じていた。 現代は大衆消費社会である。 「消費者の行動は、等価交換を原則とする。つまりは物を買うという行動、交換に…

「マスゴミ」はなぜ「情報を操作する」のか

「進撃の巨人」の諫山創さんが、インタビューで作品の発想の元になったものとして、 「誰かが情報を支配していて、自分たちには真実を伝えられていない」という思いがあった、というようなことを話していた。 このことはこちらにエントリを書いたことがある…

橋下市長の「出直し市長選」と各野党の「不戦敗戦術」を批判する:その議論の前提としての「戦後レジームの見直し」を「議論」すべきだ。

最近、憲法や立憲主義、あるいは民主主義そのものを問うような話が多い。 それは大きく言えば、安倍首相の言う戦後レジームの見直し、という問題につながっていくだろう。 民主主義というものは、資本主義と同じように、近代の産物であり、近代国家として認…

『歴史の呪縛』と「スコットランド独立」を問う住民投票の実施

歴史の呪縛、というようなものがある。 例えば、日韓関係、日中関係というものは、その典型的な例だろう。 三国とも、既に第二次世界大戦後に生まれた世代が大部分になっているのに、自分たちが生まれるより前の時代に起こったことに縛られ、いまだにそれぞ…

『最後の国民作家 宮崎駿』と「宮崎アニメの描く過渡的・奇形的な自然」

3年前、2011年の今頃のことになるが、酒井信『最後の国民作家 宮崎駿』(文春新書)を読んだ。この本は、私に宮崎作品を考える上での、また宮崎の発言を考える上での一つの枠組を提供してくれたなと思う。 今までジブリコーナーなどで立ち読みした『ユリイ…

ジブリの広報誌で山田長政を振り返る

スタジオジブリの広報誌「熱風』2月号が届いた。 この広報誌は丸善・三省堂など主要書店においてあって無料で受け取ることができるのだが、定期購読もすることができ、私は年間2000円の購読料を払って定期購読している。スタジオジブリ関係の情報がいち早く…

【今回の都知事選を振り返って:私はなぜ家入一真さんに投票したか】

長文になってしまったことを冒頭でお詫びしたい。ただこれは旬の問題なので、時機を逸しても意味がないので分割せず一気に掲載することにした。その辺をお汲み取りいただければありがたい。 【投票率はそれほどひどくなかった】 今回の都知事選は、石原都政…

「自分の意見を持つためには」(その2):「自分が大事にしたいこと」を考えるために

これは「そんなこと言われなくても分かってるよ」という人もいると思うのだけど、私の場合はそれを考えるのに30年くらいかかった感がある。自分の生理的な部分との折り合いということもあるし、実現性とか現実との折り合いということもある。私の場合は、…

自分の意見を持つためには(その1)

【自分の意見を持つためには】あまり当たり前なので書こうとも思っていなかったのだけど、実は案外こういうことで悩んでいる、迷っている人は多いのだということを最近思ったので、自分の意見をどう持つのか、ということについて書いてみたいと思う。「あま…

自分の意見を持つ大変さと、しっかりした意見を持つ人が増えることで問題解決に近づけるということ

世の中では、いろいろなことが起こっている。 不都合なこともあれば、誰かから見ればよくないと思うことでも、他の人から見れば当然だと感じられることもある。 ぱっとその様子を見ただけでは分からなくても、よく調べてみるとすごくその由来と現状に納得で…

シリーズ『日本の近代』9巻、『逆説の軍隊』(戸部良一著)は旧日本陸軍について知るにはどの本がと尋ねられたらこれをと勧められる一冊だった。

戸部良一『逆説の軍隊』(中央公論社)。陸軍についての基本的な知識や問題について総合的に書かれていて、とても参考になる。軍隊について何か一冊、と言われたら勧められる一冊だと思う。 声高に非難するでもなく弁護するでもなく、冷静で適度な距離感が読…

細川氏立候補を巡る池上彰氏の反論とメディア・リテラシーのむずかしさ

今日ネットを見ていて少し反省したことがあったので書いておこうと思う。 この「細川元首相に立候補促す」 池上彰氏「心外」と反論という記事を読んで、自分のメディアリテラシーの甘さを感じさせられた、ということだ。 池上彰さんと言えば、『こどもニュース』…

『怒り新党』の「上の話をする人への怒り」という話題と「吃音の看護師の自殺」に思ったこと

昨日たまたまテレビをつけていたら、『マツコ&有吉の怒り新党』をやっていた。その内容が妙に頭に残っていたらしく、朝の寝床の中でいろいろ考えていた。 この番組は日常生活の中で感じた様々な「怒り」を番組に投書し、そのないようについてああだこうだと…

みなもと太郎『松吉伝』は、日露戦争から朝鮮統治、満洲国建国への時代に生きた無名の男のとんでもない生涯をちら見する作品だった。

みなもと太郎『風雲児外外伝 松吉伝』(復刊ドットコム、2014)読了。発行所が「復刊ドットコム」になっているが復刊ではなく、当初『斬鬼』という時代物の雑誌に連載され、それが廃刊となって、一時『コミックGUMBO』という無料誌に掲載するという話もあっ…

国家の本来の役割と、国家が個人に幻想を与えることでその安定を図っている現状、とか

昨日書いたことを朝の寝床の幽明境中で考えていたら、いろいろ考えついたので、そのことについて軽く。 理想の社会というのはどういうものか、という問いに対して、昨日は「一人一人のやりたいことがやれて幸福である」社会が理想だ、という一応の答えを書い…

どういう社会が理想なのか

私は、世の中がどうなってほしいと思っているかというと、まあ簡単に言えば、一人でも幸せな人が増えて幸せでない人が減った方がいいと思う。でも、幸せとか望むものというのは人によってさまざまなので、それを政治の力で実現するということには限界がある…

教養の持つ本当の意味の一つは、階級転落に対する下方硬直性にあるのではないか

夕食は丸善日本橋店3階のカフェで東京駅方面の夜景を見ながら。こういう楽しみ方が文化的資産の生かし方というものなんだよなと思いつつ、fujiponさんのブログで紹介されていた西原理恵子さんの『この世でいちばん大事な「カネ」の話』の言葉を思い出した。 …

エドガーの戴冠:近藤和彦『イギリス史10講』より

近藤和彦『イギリス史10講』を読んでいる。歴史時代以前から現代までを概観する概説書なのだけど、概説書とはいえ最新の研究成果を反映したヴィヴィッドな歴史書を読むのは久しぶりで、歴史学の最前線で起こっていることが感じられてスリリングな読書になっ…

本郷和子『蕩尽する中世』:荘園整理令による国司の権限強化と「院政バブル」の時代

本郷和子『蕩尽する中世』(新潮選書)を読んだ。 ジョルジュ・バタイユのいう『蕩尽』というキーワードで日本中世を読み解こうという試み。そういうことはあまり考えたことがなかったが、確かに言われてみれば中世は昔話的には豊穣のイメージが結構ある。 …

小林よしのりさんの『大東亜論』は、戦前の「国士」たちを生き生きと画面に蘇らせていた

今日は簡単に、小林よしのり『ゴーマニズム宣言SPECIAL 大東亜論 巨傑誕生篇』に目を通した感想を書いておきたい。 先日来、たまたま小林よしのりさんについて書いたら、ちょうどその書いている期間に小林さんの新作『大東亜論』の発売があったので、これも…

オスマン・トルコ帝国の歴史叙述

今日は純粋に歴史学的な興味から読んだものについて書いてみたい。 私は西洋史学科を卒業して高校の歴史を教える教師として10年間在籍し、大学院も修士課程を終えていて、短大で日本近代史の講師などを務めたこともあるのだが、現在では歴史学の一線に触れ…

小林よしのりの時代(その4・終)

(その3)からの続きです。 2014年現在、支配的であるようにみえる思潮は、思想的な大義を求めるものではなくて、「現実主義」的な立場のものだ。それはつまり経済発展とか大国化とか現状維持とかの思想には関係ない部分に根拠をおくもので、「親米保守」と…

小林よしのりの時代(その3)

(その3)からの続きです。 90年代半ばから0年代半ばまで、かなりの部分「小林よしのりの時代」と言える時期があったように思う。小林さんは一人でさまざまなタブーに挑戦し、それまで語りにくかった問題を表に引きずり出し、論点をオープンにした。快刀乱…